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死亡から6か月余りが過ぎてからの相続放棄申述が、先日受理されました。被相続人が遺した債務は数億円ありましたから、受理されるとされないでは依頼者のその後の人生に大きな影響があります。

死亡を知った後3か月(「熟慮期間」といいます。)過ぎてからの相続放棄の申述は原則として受理されませんが、例外的に最高裁が示した基準は、相続の対象となった財産があることを知ってから3か月以内の相続放棄申述、ということです。

例えば、「オヤジには借金はない」、と信じていても、「オヤジの住んでた家は持ち家だったと知っていた」、というだけで、3か月過ぎた後の相続放棄は認められない、とされています。
http://www.courts.go.jp/tokyo/about/koho/kasaidayori04_05.html

一時期は3か月の熟慮期間を過ぎていても、わりと広く救済される例が目立ったのですが、近年は非常に厳格な運用に戻っていると言われており、先月も、知り合いのベテラン弁護士と偶然裁判所でお会いした際、相続放棄申述を受理してもらえなかったとのぼやきを聞いたばかりでした。

そんな厳しい基準が裁判所の公式ウェブサイトに載っている状況で、「オヤジがプラスの財産を持っていることは知っていた」、「オヤジが借金の連帯保証をしていることは知らなかった」という事案で、死亡から6か月以上経っており、半分もうだめかなあと思いながらも、相続放棄の申述が遅くなった事情を最高裁の理屈に合わせて構成し直してなんとかやってみたところ、相続放棄申述がめでたく受理されました。

本件の特殊性は、そのオヤジさんの公正証書遺言が存在し、その息子さん(依頼者)以外の相続人に債務を含めた相続財産をすべて相続させる内容だったというところにあります。依頼者は相続財産というものが存在することは知っていたのですけれども、自分が相続する財産はプラスもマイナスも何にもないと信じていました。そのような遺言は被相続人の死後、まもなく開示されて、依頼者も知っていました。本件は、遺言を知った時点から起算して3か月を超えていた事案です。

おそらく、裁判所としては、自分が相続する財産は何にもない、という遺言を見た依頼者が、「念のために相続放棄をしておこう」などと考えることは事実上あり得ない、ということを重視して、遺言を知った時点は3か月の熟慮期間の起算点にはしませんでした。

本来、相続債務というのは、法定相続分に従って当然に分割されますから、法律を熟知した相続人を仮定するならば、「遺言で相続分を指定できるのはプラスの財産だけだ。債務については当然分割であり、遺言で指定できないから、オレが相続する分もあるかもしれない。どうせプラスの財産はもらわないんだし、この際、マイナスの財産があるかもしれないから念のために相続放棄の申述もしておこう!」と考える可能性はあります。

しかし、裁判所は、「相続人はそのように法律を熟知した上で用心深く考えるべきである。」との立場は取らないで、マイナスの財産が実際にあると判明した時点からの3か月以内なら受理するとの立場を取りました(名古屋高決平成19年6月25日家月60-1-97と同じ枠組みでの判断です)。

本件から得た教訓としては、裁判所の公式ウェブサイトで明らかに「ダメ」と書かれている事案でも、素人判断で諦めずに、弁護士に一度相談してみるべし、ということだと思います。

相談した弁護士は、最高裁判例解説、家裁月報平成21年1月号、判タ1144号72頁なども、参照しながら適切に処理してくれるであろうと思います。
これは警察庁のサイトにあったんですが、2008年5月1日に最高検察庁が公表した「取調べに関する不満等の把握とこれに対する対応について」「取調べに当たっての一層の配慮について」がみつかりません…。
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         平成20年1月
         警察庁

  警察捜査における取調べ適正化指針

我が国の刑事手続において、被疑者の取調べは、事案の真相解明に極めて重要な役割を果たしていることは、論を俟たないところである。しかしながら、昨今、その在り方が問われる深刻な無罪判決等が相次ぎ、取調べを始めとする警察捜査における問題点が厳しく指摘された。警察としては、これらの点について深く反省し、今後の捜査にいかすべき事項を抽出し、再発防止に向けた緊急の対策を講じてきたところであるが、国民からの批判は依然として厳しく、警察捜査に対する信頼が大きく揺らいでいる。
また、平成21年5月までに導入される裁判員裁判制度の下では、一般国民から選ばれる裁判員が刑事事件の審理に加わり、警察捜査の結果が直接国民の視点から検証されることとなる。したがって、裁判員の心証形成に資するという観点からも、警察における捜査手続、とりわけ被疑者の取調べの在り方についても、一層の適正性の確保が求められている。
このような諸情勢を踏まえ、国家公安委員会は、警察捜査における取調べの一層の適正化を喫緊の課題と認め、全国警察を挙げた取組みが必要であるとして、平成19年11月1日、「警察捜査における取調べの適正化について」を決定した。
警察庁は、都道府県警察における捜査の実態を十分に勘案し、来るべき裁判員裁判への適合性をも念頭に置きつつ、捜査における取調べの一層の適正化について対策を講ずることとなった。
警察庁は、この決定に基づき、鋭意、対策の検討を進め、このたび、警察が当面取り組むべき施策を「警察捜査における取調べ適正化指針」として取りまとめた。この指針にのっとり、取調べの適正化に向けた施策を迅速かつ着実に実施し、警察捜査に対する国民の信頼を確かなものとするよう全力を尽くしていく。



1 取調べに対する監督の強化
(1) 捜査部門以外の部門による取調べに関する監督
ア警視庁及び道府県警察本部の総務又は警務部門に取調べに関する監督を担当する所属(以下「本部監督担当課」という。)を置くとともに、本部監督担当課及び警察署の総務又は警務部門に取調べに関する監督を担当する監督担当者を置く。
イ取調べに関する監督を的確に行うことができるよう、次に掲げる取調べに係る不適正行為につながるおそれがある行為を監督の対象となる行為(以下「監督対象行為」という。)として国家公安委員会規則に類型的に規定する。
(ア) 被疑者の身体に接触すること(やむを得ない場合を除く。)。
(イ) 直接又は間接に有形力を行使すること。
(ウ) 殊更不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること。
(エ) 一定の動作又は姿勢をとるよう強く要求すること。
(オ) 便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。
(カ) 被疑者の尊厳を著しく害するような言動をすること。
(キ) 一定の時間帯等に取調べを行おうとするときに、あらかじめ、警視総監若しくは道府県警察本部長(以下「警察本部長」という。)又は警察署長の承認を受けないこと。
ウ罪種や任意・強制の別を問わず、取調べ室等において行われる被疑者の取調べについて、監督対象行為の有無を確認すること等により、取調べに関する監督を行う。
エ取調べに関する監督は、大要次のような方法により行うこととする。
(ア) 取調べ状況の把握
a 被疑者を取調べ室又はこれに準ずる場所において取り調べたときは、捜査主任官は、本部監督担当課に対し、速やかに、取調べ状況報告書(犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)第182条の2第1項に規定する取調べ状況報告書をいう。以下同じ。)等の記載内容を報告する。
b 警察署に置かれる監督担当者は、被疑者等からの苦情の申出を受けるとともに、当該警察署において行われる被疑者の取調べの状況を随時確認し、又は必要により所要の調査を行い、その結果を本部監督担当課に報告する。
c 本部監督担当課は、警察署等に対し定時又は随時の巡察を行い、監督対象行為の有無を中心とする被疑者の取調べの外形的状況を確認する。
d 取調べについて苦情の申出があったときは、申出者の氏名、連絡先、苦情の内容等を書面に記録するとともに、苦情処理に係る所定の手続に従い、速やかに都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)又は警察本部長に報告する(報告の内容は、すべて本部監督担当課においても把握する。)。
(イ) 調査
本部監督担当課は、上記(ア)により、監督対象行為がなされた可能性があると認めたときは、関係書類の閲覧、捜査主任官等からの報告聴取、取調べの外形的状況の確認、取調べ官等からの報告聴取、被疑者との面接等を実施し、監督対象行為の有無を確認する。
(ウ) 監督対象行為を認めた場合の措置
a 監督担当者は、調査過程において監督対象行為を現に認めたときはこれを中止させることができることとする。
b 調査結果は書面に記録するとともに、本部各部指導担当部署又は監察部門に通報し、業務上の指導や懲戒処分に活用する。
c 取調べに関する監督の実施状況については、定期的又は随時に公安委員会に報告する。
(2) 被疑者の取調べ過程・状況に関する書面による記録制度の充実
取調べ状況報告書は、身柄を拘束されている被疑者又は被告人を取調べ室又はこれに準ずる場所において取り調べたときに作成することが義務付けられているところ、原則として、罪種や事案の軽重を問わず、身柄を拘束されていない被疑者又は被告人を取調べ室又はこれに準ずる場所において取り調べたときにも作成することを義務付ける。
2 取調べ時間の管理の厳格化
(1) 取調べは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に又は長時間にわたり行うことを避けなければならない旨を犯罪捜査規範に規定する。
(2) 次に掲げる場合には警察本部長又は警察署長の事前の承認を受けなければならないこととするなど、取調べ時間の管理に関する所要の事項を国家公安委員会規則に規定する。
ア午後10時から翌日の午前5時までの間に取調べを行おうとする場合
イ休憩時間等を除き、1日当たり8時間を超えて取調べを行おうとする場合
3 その他適正な取調べを担保するための措置
(1) 取調べ室の設置基準の明確化
取調べ環境を国民に対して明確にするため、取調べ室の設置基準を犯罪捜査規範に規定する。
(2) 取調べ状況の把握を容易にするための施設整備の一層の充実
取調べ状況を外形的に把握することができるようにするため、すべての取調べ室に透視鏡等の設置を図るとともに、取調べ室への入退室時間を電子的に管理するシステムや取調べ状況報告書等の記載内容を電子的に把握するシステム等の整備を推進する。
4 捜査に携わる者の意識向上
(1) 適正捜査に関する教養の充実
新たに捜査に従事することとなる警察官に対しては、原則として、各都道府県警察の警察学校において部門別任用科課程を実施し、捜査員として必要な専門的知識・技能の修得を図っているところであるが、司法制度改革等に的確に対応し適正な捜査を推進するため、同課程におけるカリキュラムを見直し、適正捜査に関する教養の充実を図る。
また、適正な取調べを推進する観点から、取調べに係る指導的立場にある警察官に対する教養の充実を図る。
(2) 具体的事例に基づいた実践的な教養の実施
警察大学校特別捜査幹部研修所において、取調べを始めとする各種捜査手法の実践的な教養の在り方について研究し、その成果を都道府県警察に還元し、活用を図る。
(3) 技能伝承官の活用
次代を担う捜査員に対し、取調べを始めとする各種捜査の手法や適正捜査の在り方を的確に伝承するため、取調べ等に関し卓越した技能を有する捜査員については、退職後においても非常勤職員として採用し、又は再任用することにより、技能伝承官として活用を図る。
(4) 弁護士を始めとする法曹関係部外講師の積極的な招聘
都道府県警察における教養では、従前から、教養内容に応じ、部外講師の招聘が行われてきたところであるが、取調べに関する教養に当たっては、これまで以上に弁護士等の法曹関係部外講師を積極的に招聘し、弁護士等からみた警察捜査、とりわけ取調べについての問題意識を醸成し、適正捜査に係る意識の向上を図る。
(5) 人事上の措置
ア勤務成績の処遇への的確な反映
能力、実績に応じた人事管理を推進するため、取調べ官等職員の勤務成績の昇任、給与等の処遇への一層的確な反映に努める。
イ積極的な表彰の実施
取調べ官等職員が旺盛な士気を維持しつつ職務に精励するよう、取調べ官等職員の功労を適切に評価し、表彰を一層積極的に実施する。
ウ懲戒処分に係る行為類型の明確化
監督対象行為に関し、懲戒処分の対象となり得る行為の類型を明確化する。
エ監督対象行為を認めた場合の厳正な対処等
監督対象行為を認めた場合は、諸要素を総合的に考慮して、懲戒処分を始めとする厳正な措置を講ずるほか、取調べの一層の適正化を図る観点から、所要の業務上の指導を実施する。
オ能力及び実績に応じた適材適所の人事配置の推進
取調べ等の捜査活動を適正かつ能率的に実施するため、職員の能力及び実績を的確に把握し、より一層客観的かつ公正な勤務評定を行うよう努めるとともに、その結果に応じ、適材適所の人事配置を推進する。
最高裁判所第三小法廷
平成20年06月10日判決

要旨
1 反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合に,被害者からの損害賠償請求において同利益を損益相殺等の対象として被害者の損害額から控除することは民法708条の趣旨に反するものとして許されない
2 ヤミ金融業者が著しく高利の貸付けにより元利金等の名目で借主から金員を取得し,これにより借主が貸付金に相当する利益を得た場合に,借主からの不法行為に基づく損害賠償請求において同利益を損益相殺等の対象として借主の損害額から控除することは民法708条の趣旨に反するものとして許されないとされた事例

本文
主文
原判決のうち上告人らの敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,本件を高松高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人五葉明徳ほかの上告受理申立て理由について

1 本件は,いわゆるヤミ金融の組織に属する業者から,出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの。以下「出資法」という。)に違反する著しく高率の利息を取り立てられて被害を受けたと主張する上告人らが,上記組織の統括者であった被上告人に対し,不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

2 原審が確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,著しく高利の貸付けにより多大の利益を得ることを企図して,Aの名称でヤミ金融の組織を構築し,その統括者として,自らの支配下にある第1審判決別紙2「被害明細表」の「店舗名」欄記載の各店舗(以下「本件各店舗」という。)の店長又は店員をしてヤミ金融業に従事させていた。

(2) 上告人らは,平成12年11月から平成15年5月までの間,それぞれ,第1審判決別紙2「被害明細表」記載の各年月日に同表記載の金銭を本件各店舗から借入れとして受領し,又は本件各店舗に対し弁済として交付した。そして,上記金銭の授受にかかわる利率は,同表の「利率」欄記載のとおり,年利数百%〜数千%であった。

(3) 本件各店舗が上告人らに貸付けとして金員を交付したのは,上告人らから元利金等の弁済の名目で違法に金員の交付を受けるための手段にすぎず,上告人らは,上記各店舗に弁済として交付した金員に相当する財産的損害を被った。

3 原審は,次のとおり判示して,被上告人について不法行為責任を認める一方,上告人らが貸付けとして交付を受けた金員相当額について損益相殺を認め,その額を各上告人の財産的損害の額から控除した上,原判決別紙認容額一覧表の「当審認容額」欄記載のとおり,上告人らの各請求を一部認容すべきものとした。

(1) 出資法5条2項が規定する利率を著しく上回る利率による利息の契約をし,これに基づいて利息を受領し又はその支払を要求することは,それ自体が強度の違法性を帯びるものというべきところ,本件各店舗の店長又は店員が上告人らに対して行った貸付けや,元利金等の弁済の名目により上告人らから金員を受領した行為は,上告人らに対する関係において民法709条の不法行為を構成し,被上告人は,Aの統括者として,本件各店舗と上告人らとの間で行われた一連の貸借取引について民法715条1項の使用者責任を負う。

(2) 本件各店舗が上告人らに対し貸付けとして行った金員の交付は,各貸借取引そのものが公序良俗に反する違法なものであって,法的には不法原因給付に当たるから,各店舗は,上告人らに対し,交付した金員を不当利得として返還請求することはできない。その反射的効果として,上告人らは,交付を受けた金員を確定的に取得するものであり,その限度で利益を得たものと評価せざるを得ない。

(3) 不法行為による損害賠償制度は,損害の公平妥当な分配という観点から設けられたものであり,現実に被った損害を補てんすることを目的としていると解される(最高裁昭和63年(オ)第1749号平成5年3月24日大法廷判決・民集47巻4号3039頁参照)ことからすると,加害者の不法行為を原因として被害者が利益を得た場合には,当該利益を損益相殺として損害額から控除するのが,現実に被った損害を補てんし,損害の公平妥当な分配を図るという不法行為制度の上記目的にもかなうというべきである。

4 しかしながら,原審の上記3(3)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
民法708条は,不法原因給付,すなわち,社会の倫理,道徳に反する醜悪な行為(以下「反倫理的行為」という。)に係る給付については不当利得返還請求を許さない旨を定め,これによって,反倫理的行為については,同条ただし書に定める場合を除き,法律上保護されないことを明らかにしたものと解すべきである。したがって,反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも,上記のような民法708条の趣旨に反するものとして許されないものというべきである。なお,原判決の引用する前記大法廷判決は,不法行為の被害者の受けた利益が不法原因給付によって生じたものではない場合について判示したものであり,本件とは事案を異にする。
これを本件についてみると,前記事実関係によれば,著しく高利の貸付けという形をとって上告人らから元利金等の名目で違法に金員を取得し,多大の利益を得るという反倫理的行為に該当する不法行為の手段として,本件各店舗から上告人らに対して貸付けとしての金員が交付されたというのであるから,上記の金員の交付によって上告人らが得た利益は,不法原因給付によって生じたものというべきであり,同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として上告人らの損害額から控除することは許されない。これと異なる原審の判断には法令の解釈を誤った違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

5 以上によれば,論旨は理由があり,原判決のうち上告人らの敗訴部分は破棄を免れない。そして,上告人らが請求し得る損害(弁護士費用相当額を含む。)の額等について更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官田原睦夫の意見がある。

裁判官田原睦夫の意見は,次のとおりである。
私は,本件において,被上告人の支配下にある各店舗から上告人らに対して,著しく高利の約定による貸付金名下で交付された金員は,不法原因給付として,本件各店舗から上告人らに対して返還を請求することができないものであり,また,上告人らが上記貸付金名下で交付を受けたことによる利得は,損益相殺ないし損益相殺的な調整として上告人らが被った損害額から差し引くべきではないとする点では,多数意見と結論を同じくする。しかし,多数意見のように「反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除すること」も許されない,と一義的に言い切ることには,なお躊躇を覚える。不法行為の被害者が加害者から受けた給付が,不法原因給付としてその返還を要しない場合であっても,被害の性質や内容,程度,被害者の対応,加害行為の態様等から,その給付をもって損益相殺的処理をなすことが衡平に適う場面があり得ると考えられるからである。
ところで,本件では,上告人らの被った財産上の損害は,上告人らが本件各店舗に対して支払った元利金等と解されるところ,それに関連して,本件における損害の捉え方及び損益相殺との関係,並びに不法原因給付の給付物を被害者が加害者に交付した場合の関係について,以下に若干の補足的な意見を述べる。
加害者による不法行為により被害者が金銭等の財産上の損害を被った場合に,被害者が当該不法行為自体によって財産上の利益を得ているときには,その差額をもって財産上の損害額と評価すべきものである。例えば,加害者が投資名下の詐欺で被害者から100万円の交付を受け,その際に利益配当の前払であるとして被害者に5万円を交付した場合には,95万円が損害額である。そして,被害者が当該不法行為に起因して,別途,何らかの利得を得ている場合に,当該利得を既に評価されている損害額から差し引くべきか否かという点において,損益相殺の可否が問題となると考える。
本件では,上告人らは本件各店舗から著しく高い利率で貸付けを受け,その後に本件各店舗に対して元金部分と利息部分とを明確に区別することなくその元利金名下で支払っているところ,上告人らには,その支払の都度その支払った金額相当額の損害が発生していると評価されるのであり,その損害額の算定において,上告人らが当初に貸付金名下に給付を受けた金額との差額が問題になる余地はない。
このように,本件では当初の貸付金名下の金員の交付とは別途に損害の発生が認められるところから,その損害と貸付金名下で交付を受けた金員相当額との損益相殺の可否が問題となり得るが,本件では,それが認められるべきでないことは,多数意見の述べるとおりである。
ところで,上告人らは,貸付金の元利金の支払名下で本件各店舗に支払をなしているところから,利息制限法を超える利息を支払った場合に,その超過部分は,当然に元本に充当されるとする判例法理との関係が一応問題となり得る。しかし,同判例法理は,金銭消費貸借契約の約定で定められた利率が利息制限法で定める利率を超えてはいるものの,当該金銭消費貸借契約それ自体は有効である場合にかかるものであって,本件のごとく貸付行為自体が公序良俗に反し無効である場合には,その貸付けに対する利息の支払を観念する余地はないから,上記判例法理の適用の可否は問題となり得ない。
また,給付が不法原因給付であって,給付者から利得者に対して不当利得返還請求をすることができない場合に,利得者が給付者に対し,当該給付にかかる物を引き渡し,あるいは給付にかかる利得額の一部又は全部を支払った時は,利得者は,それを返還し又は支払うべき義務が存しなかったことを理由として,給付者に対して,再度の給付を求めることができないと解されているところ,上告人らの本件各店舗に対する支払が,本件貸付金名下で交付を受けた金員の弁済としてなされている場合には,その弁済は,不法原因給付にかかる給付の返還と評価され,その弁済額相当額は損害として評価することができない余地がある。しかし,本件においては,上告人らの本件各店舗に対する支払は,元利金等としてなされてはいても,上記のとおり明確に元金部分として区分して弁済された事実は認められず,また,元利金名下の弁済であっても,上記のとおり判例法理を適用して制限利息超過部分が元本の弁済に充当される余地もないから,上告人らから本件各店舗に対して,貸付金名下の元金に対する弁済としてなされた給付は存しないものというべきである。
したがって,上告人らが被った財産上の損害は,上告人らが本件各店舗に元利金名下で支払った金員の総額というべきである(なお,上告人らが,本件各店舗に対して元利金名下で支払った金額につき,一審判決は,上告人らの陳述書記載の金額は,銀行に対する調査嘱託の結果と明らかに異なっている部分があり,その記載を直ちに信用することができない,として,上告人らが本件各店舗に対して支払った元利金につき一審判決別紙4取引一覧表の弁済額欄の金額を認定しているのに対して,原判決は,その陳述書の信用性について判決理由中に何ら触れることなく,同陳述書を証拠として引用した上で,上告人らの主張するとおりの元利金名下での金員の支払がなされたものと認定している。この点は,証拠の評価の問題ではあるが,同一の証拠関係に基づいて原審の認定を変更する場合には,当事者に対する説明の観点からも,判決理由中に何らかの説示がなされることが望まれる。)。
(裁判長裁判官 那須弘平 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男 裁判官 田原睦夫 裁判官 近藤崇晴)
妻が浮気相手の子供を妊娠してしまって離婚した。しかし、離婚後300日以内に生まれた子供は元夫の子として戸籍に記載されてしまう、夫の子として戸籍に記載されないようにするにはどうすればよいか、という問題については、全国の行政書士がいろいろと回答をしているようです。


ある行政書士のサイトによれば…
「どうにか元夫の戸籍に入ることなく、事前に回避する方法がないかと相談をよく受けますが、
胎児のうちに(出生する前)に回避することはできません。
出生後の方法としては、元夫が地方裁判所に「嫡出子否認の訴え」を提起するか、母親が子供の代理人として家庭裁判所に「親子関係不存在確認の訴え」を提起するかのどちらかです。
以前は、元夫からの訴えしか認められていませんでしたので、一旦元夫の戸籍に入り、その後訴えが認められたら戸籍の変更をするという形でしたが、現在では、母親が子供の代理人として訴えることにより、審判中、出生届け提出期限を延ばせるようになっているようです。
ただし、DNA鑑定などが必要になりますので、審判に2,3ヶ月かかることもあります。その間保険や1ヶ月検診などが受けられないという問題点がでています。」とありました。


しかし、
まず、正しくは「嫡出否認の訴え」も「親子関係不存在確認の訴え」も家庭裁判所でやるのですが、調停前置主義なので、手続としては、「嫡出否認の調停申立て」「親子関係不存在確認の調停申立て」というのを行います。その後、家裁では、「合意に相当する審判」というのをしてくれます。
家裁の調停というのは非常に安く、2000円程度です。


裁判所にちゃんと問い合わせたら、以下のことが分かりました。
1.裁判所にはこういう事案専用の、「親子関係不存在確認調停申立書」のフォームがある。
2.子の出生前でも、出産が近いのなら、家裁での申立ては受理されることがある。


そこで、私は出生届は速やかに出したいと考える母親(妊婦)には、以下のステップで進めることを推奨します。
<ステップ1>
出産前でも、もと夫の戸籍謄本と自分(妻)の戸籍謄本を添えて、家庭裁判所に親子関係不存在確認の調停申立てをしてください。
「親子関係不存在確認の調停申立書のフォームを下さい。出生届未了のフォームです。」と言えば専用フォームをくれます。
申立人を妻、相手方を夫として、フォームを埋めて下さい。最後の「特記事項」のところに、「出生届未了期間を可能な限り短縮するため、子の出生前ではありますが本日申し立てます。○月○日に出産予定なので、第1回調停期日を○月上旬としていただきたく上申します。出生証明書とDNA鑑定は調停期日に持参いたします。」と書いて提出します。さらに、元夫の上申書として、「私と( 元妻の氏名 )とは当時性交渉がなかったため、私の子であることはあり得ません。速やかに審判をお願いします。」と書いて署名捺印してもらったものを念のために合わせて提出します。
申立て手数料は2000円(印紙1200円+切手800円)です。DNA鑑定は、例えば、この業者なら29000円のようです。http://www.genetrackjapan.com/price.php
時間短縮のため、出産前にDNA鑑定の申込をしておいてください。サンプル採取キットが届きます。

<ステップ2>
出産後、直ちにDNA鑑定のサンプルを採取します。
DNA鑑定は、父子関係を否定するのが目的なので、夫、妻、子のサンプルを採取することになります。
鑑定結果が届いたら、病院でもらった出生証明書と一緒に裁判所に持っていきます。そうすれば、裁判所が親子関係不存在の審判書をくれますので、それと病院からもらった出生証明書を持って役所に出生届を出しに行きます。
もし、調停期日に鑑定結果の到着が間に合わなかった場合でも、裁判所でそのことを説明して、近日中に提出するといえば、追加提出した際に審判書をくれるはずです。

<ステップ3>〜再婚
役所に出生届を出す際に、同時に浮気相手の認知届と、婚姻届を出します。(子供が生まれた場合は、6か月待つ必要はなくなります)
もちろん、認知届と婚姻届は後日でもかまいません。特に収入のことを考えると、婚姻届は出さずに、母子家庭として自治体の補助金を受けるほうが生活が安定することがあります。

なお、血液型によって、父子関係が完全に否定できる場合は、DNA鑑定が不要となることがあります。その場合は血液型を証明できるものを裁判所に提出すれば足ります。

クレサラ重要判例

判例タイムズ1264号(最新号)に掲載された最判平成20年1月18日は、非常に重要な意義があるので、要旨と全文をここに載せておきます。

要旨
1 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されない。
2 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合において,下記の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができるときには,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を第2の基本契約に基づく取引により生じた新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するものと解するのが相当である。
         記
(1)第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,
(2)第1の基本契約についての契約書の返還の有無,
(3)借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無,
(4)第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況,
(5)第2の基本契約が締結されるに至る経緯,
(6)第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等

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ネットでクレサラ処理の東京三会統一基準を検索すると当然に弁護士会のウェブサイトが出てくると思いこんでいたのですが、やってみるとほとんどヒットしないので、弁護士会の会員専用サイトからコピペしたものを下に貼り付けておきます。
ご参考まで。

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○クレジット・サラ金処理の東京三弁護士会統一基準
(施行 平成8年7月24日)
改正 平成12年9月13日



  東京弁護士会
  法律相談センター運営委員会
  第一東京弁護士会
  法律相談センター運営委員会
  第二東京弁護士会
  法律相談センター運営委員会


1 取引経過の開示
   当初の取引よりすべての取引経過の開示を求めること。
   取引経過の開示は、金融監督庁の「事務ガイドライン」にも明記されており、監督官庁から業者に協力の徹底が指導されています。仮に、取引経過の開示協力が不十分な場合、弁済案を提案せず、法律相談センターを通じて、或は、直接に監督官庁(財務局又は都道府県知事)に行政指導を求めてください。 
2 残元本の確定
   利息制限法の利率によって元本充当計算を行い債権額を確定すること。
   確定時は債務者の最終取引日を基準にします。
3 和解案の提示
   和解案の提示にあたっては、それまでの遅延損害金、並びに将来の利息は付けないこと。
   債務者は、すでに今までの支払が不可能となり、弁護士に任意整理を依頼してきたものであり、担当弁護士としては、債務者の生活を点検し、無駄な出費を切り詰めさせて源資を確保し、和解案を提案するものであり、この和解金に、従来・将来の利息・損害金を加算することは弁済計画そのものを困難にさせます。
4 (1)  クレジット会社の立替代金債権額の確定にあたっては、手数料を差し引いた商品代金額を元本として利息制限法所定の利率によって算出された元本額を超えないよう注意すること。
  (2)  貸金債務が債権者と同一系列の保証会社に履行されて求償債権になった場合、保証会社の求償債権額は、本来の貸金債権額まで減額すること。
  (3)  非弁提携弁護士によって和解が成立した事案については、この和解が利息制限法に違反していないかを十分に調査すること。
以上


附 則
この基準は、平成8(1996)年7月24日から施行する。
附 則(改正 平成12年9月13日)
この基準は、平成12(2000)年9月13日から施行する。
企業不祥事について、国民生活に広く被害が及ぶことから、公益通報者保護法ができました。同様に、道路公団や社会保険庁等による著しく不適正な運用等により、税金、年金資金、雇用保険の資金等の公金が無駄遣いされ、本来受けられるはずの年金が受けられなかったり、税金や保険料の値上がりを招来して、国民生活に広く被害が及んでいることから、例えば次のような法制について検討すべきではないかと思います。

A案
株主代表訴訟の公務員版
1.国家公務員の職務執行につき悪意又は重過失を以てする
2.1億円以上の支出負担行為について国に損害が発生
3.本邦において1年以上居住する国民(外国人を含む)が、
4.国に対し、書面を以て、当該公務員の責任を追及する訴えの提起を請求できる。
5.60日以内に訴えを提起しないときは、国民が東京地裁に提起
6.訴額は財産権上の請求でない請求に係る訴えとして算定(160万円とみなす)
7.国庫への返還を命ずる判決
8.裁判所は原告に担保提供命令を出せる。
9.国の補助参加義務
10.原告が勝訴した場合の弁護士報酬の請求

B案 国賠義務を前提とした求償についての代表訴訟
国賠法の改正によって、国が国賠法上の損害賠償義務を負った場合の公務員への求償を国が怠った場合に、納税者代表訴訟を認める。
1.国が当該公務員の故意又は重過失の行為により、国賠法上の損害賠償義務を負った
2.当該国賠訴訟で当該公務員も訴訟告知を受けた
3.本邦において1年以上居住する国民(外国人を含む)が、
4.国に対し、書面を以て、当該公務員の責任を追及する訴えの提起を請求できる。
5.60日以内に訴えを提起しないときは、国民が東京地裁に提起
6.訴額は財産権上の請求でない請求に係る訴えとして算定(160万円とみなす)
7.国庫への返還を命ずる判決
8.裁判所は原告に担保提供命令を出せる。
9.原告が勝訴した場合の弁護士報酬の請求

※ B案では、公金の違法な使用には対処できない(国民には損害賠償請求権がないから)。

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